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胃痛

  • 40代 女性

症状

2週間前に頭痛が起こり、その際に鎮痛剤を服用した。

鎮痛剤はその一度きりしか服用していないが、頭痛は治った反面、それ以降胃がたまにキリキリ痛んだり、常時鈍痛のような感覚もある。食欲などは問題ないが、胃痛だけずっと残存している。

推察

まず胃痛ということで何からの胃痛か考慮する必要があるが、この場合は鎮痛剤を服用してからの胃痛ということは明確である。鎮痛剤からの胃痛は、鎮痛剤の種類にもよるが一般的にはロキソニンを服用することが多い。

ロキソニンは炎症物質であるプロスタグランジンの生成を抑えるが、同時に胃粘液の産生や分泌をさせるものの産生も同時に抑えてしまうので胃壁が胃酸にやられてしまい胃痛が発生する。よくNSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬)潰瘍と呼ばれるものがあるのは、このためである。

そして、東洋医学では薬を代謝する際には肝機能が亢進して肝実になると言われている。肝実になると五行の相剋関係として肝(木)は脾(土)を攻撃する。そのために肝からの攻撃で胃もやられてしまうという一面もある。

また、この方は初診は生理痛と頭痛で来院してるため、その症状は現在は治っているが元々は肝の影響を受けやすいと思われる。生活背景に小さなストレスが日頃より感じていることもあると訴えている。

以上を踏まえると今回は胃はもちろんのこと、肝の確認もしたいと思う。また、腰痛や背部痛はなく、首肩こりが少々あるくらいなので、背面の兪穴よりも腹診で捉えた方が良いと判断して仰臥位で治療することにする。なお、胃酸が逆流してきたり、下痢便秘などの症状はない。

触診

  • 仰臥位

腹診

・腎、胃、鳩尾、膵、左大腸、左卵巣、左鼠径靭帯に2点、胆、肝、右大腸※瘀血塊有り。強圧痛ある。

頚診

僧帽筋2、3、42、3、4
胸鎖乳突筋2、3

治療

 上印堂

  •  腎、胃、膵、胆、右大腸の圧痛消失。

 公孫

  •  左大腸、左卵巣、左鼠径靭帯1点の圧痛消失(瘀血塊は小さくはなっているが未だある。ただ、圧痛は消失)

 太衝

  •  肝、右大腸の圧痛消失。

 左帯脈

  •  左鼠径靭帯の圧痛消失。この時点で腹診の圧痛、並びに左右の僧帽筋の圧痛は全て取れている。

 右外関

  •  右SCM2の圧痛消失。

 左内関

  •  左SCM2、3の圧痛消失。また、瘀血塊も消失した。

以上で全ての圧痛が取れたので、腹部と頚部を温熱しながら20分程置鍼。

置鍼後、胃の感覚を尋ねるとスッキリしたことを確認でき、同時に首肩の張りも消失していることを確認して今回の鍼治療は終了する。ただ、瘀血塊がかなり気になった事と、腹部の冷えもあったのでVEMで漢方も確認する。

VEM

  • 葛根湯 2/日 
  • 桂枝茯苓丸 1/日

上記の処方で2週間経過を観ることにした。

以前は生理痛や腹痛、強い首肩こりがあったので加味逍遙散を処方していたが、今回は瘀血が気になり確認した所、瘀血もあるので胃の鋭痛も起こっていると考えたので駆瘀血のために桂枝茯苓丸に変更した。

考察

今回の胃痛の原因は大きく分けて鎮痛剤、肝実、瘀血の3つにあると思われた。この中で最も原因がありそうなものは、体の反応をみると瘀血になると思う。理由としては大きな圧痛の強い瘀血塊があったためだ。

瘀血を中心に考えると、今回の瘀血の原因として薬剤の副作用や、肝実による肝門脈圧が亢進し肝周辺の血流に影響を及ぼしたことが考えられる。その原因に対しては、薬剤はすでに服用していないので今後は注意喚起をするだけで現在では問題ない。問題は日常で肝実になることを避けていきたいので、生活習慣から肝に負担のかかることを避ける必要がある。

まず寝る前のスマホは簡単に注意することができるだろう。目=肝なので目の負担を減らすことは行いたい。

そして日々のストレスの要因を考えるために色々と現況を聞いていくうちに、現在のストレスは夏休みで子供が一日中いるので生活リズムが崩れていること、友人とランチにいくことが楽しみだったがコロナでそれが全く出来ていないこと、などがあった。

解決策としては子供は昨日から学校が始まり、普段の生活リズムに戻ったのでそれは解決しそうだ。美味しいものを食べるのが好きで友人とランチに行けないことはしばらく続きそうなので、それに変わるリフレッシュとしてハワイの番組を観ることも好きということなので、それを代替案としてやってみることにすることにした。ハワイの番組のことはすっかり忘れていたそうなので、それを観て少しでも解消できればと思う。

そして治療の翌日に、スッキリしてストレスも減らせそうだと連絡が来たので、安心した。

このように病態の把握を行い、その病態は何が原因なのかは問診や触診をしていくうちに出来るだろう。ただ、なぜそのような病態になったのかという背景を考えないと、また同じような症状が出てしまう。

症状の裏には、それぞれの病態があり、病態の裏にはそれぞれの背景がある。それが日々の生活習慣であったり、食習慣やアレルギーなど、非常に多岐に渡るが、それを考察していかないことには根本的な解決にならないと感じる。そのためには、アキュゾーンで結果を出す治療を行い、信頼関係を築いていき、色々な話の中で本人に気づいてもらうことも治療の一環としてはかなり大きな意味を持つと思う。

  • この記事を書いた人

島田正寿

2014年に寿鍼灸院を開業。以来、鍼灸専門で様々な疾患を持つ患者さんを治療している。また、寿鍼灸院での臨床の他、学校教員やスポーツ現場でも活動中。師匠はアキュゾーンセラピーを築き上げた中野雅章先生。

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